【航空宇宙産業について】航空宇宙産業に関わる様々な組織
皆さんは、航空宇宙産業がどのように国と繋がりを持っているのかご存知ですか?
今回は、航空宇宙産業に関わる様々な組織を紹介します。
〈日本の航空機産業に関わる機関〉
昭和27年(1952年)に日本の航空工業が再開されて以来、日本の航空宇宙産業事業は「通商産業省」*1によって発展、拡大されてきました。
現在(令和2年)では、経済産業省(に属する関東経済産業局)の管轄である『一般社団法人 日本航空宇宙工業会』、『一般財団法人 日本航空機開発協会』、『一般財団法人 日本航空機エンジン協会』という民間団体によって発展を促進されています。この3つの団体は、政府である経済産業省に日本の航空宇宙産業の付加価値の存続や国際競争、ビジネスマッチング事業*2、産業全体の競争力強化など、経済産業省の意向に沿った支援を任されて行って来ました。以下では、紹介した3つの団体が、日本の航空宇宙産業発展、拡大の為にどのような働きをしているのか紹介します。
・『一般社団法人 日本航空宇宙工業会』
英文名称:SJAC(The Society of Japanese Aerospace Companies)
SJACは、航空機をはじめとした航空機分野、人工衛星・ロケットをはじめとした宇宙分野の素材等の開発や、航空輸送に携わる企業と貿易商社など、計約140社で成り立っています。
他国の工場と親和を図り情報を交わす為に、国際航空宇宙工業競技会(ICCAIA)との交流会を実施する他、公開イベントとして国際航空宇宙展という展示会も開催し、共催する東京ビックサイトとイベントを企画・運営するなどの活動を行っています。
設立:昭和27年(1952年)
目的:日本の航空宇宙工業の技術・産業を高度化し発展させ、航空宇宙産業の世界的な発展に貢献すること。
主な活動:将来構想に関する調査、研究、開発、振興、産業基盤の整備、国際交流、国内展示会、広報活動、関係官庁とのコンタクト等。
英文名称:JADC(Japan Aircraft Development Corporation)
創立から現在までの間に、日本の中心核として機体メーカーを取りまとめており、ボーイング社との国際共同開発に幾つか成功しています。
設立:昭和48年(1973年)3月
目的:民間航空機の国際共同開発を行うこと。
主な活動:民間航空機の開発に関する調査及び研究、試験、分析、製造及び販売の促進、それらに伴う大型民間輸送機関連技術開発事業、次世代中小型民間輸送機関連技術開発事業等。
英文名称:JAEC(Japanese Aero Engines Corporation)
JAECの次世代中小型民間輸送機用エンジン(PW1100G-JM)開発事業では、国際共同開発母体である IAE LLC 社、P&W 社、MTU 社という企業との担当作業の調整・計画立案・管理を行っています。同様に大型民間用エンジン(GE9X)開発事業でも、国際共同開発先であるGE 社と担当作業の調整・計画立案・管理を行っています。
設立:昭和56年(1981年)10月
目的:民間航空機のエンジン開発等の調査研究などを通じて開発を促進し、航空機工業全体の発展を図ること。
主な活動:民間航空機のエンジン開発に関連する調査研究、試験、成果の分析、製造及び販売の促進、整備、改造及び修理の促進、それらに伴う事業等。
また日本政府は、全国で航空機部品を生産している航空機産業クラスター同士*3の連携を強化しようという国の方針を示し、経済産業省(に属する関東経済産業局)の元に『全国航空機クラスター・ネットワーク』という組織を構築しました。
この組織は、航空機部品を一貫生産するグループや、航空機産業への参入を目指す研究会など、全国各地の45の航空機産業クラスターが所属しており、国内から国外までの航空機産業クラスター情報の発信、新たな一貫生産を目指す組織の支援などを行っています。
私たち伊吹ゼミ11期生が課題をいただいた「KAIN(京都航空宇宙産業ネットワーク)」も、このネットワークの内の一つです。
このように、国内だけでも様々な組織が、日本の航空宇宙産業の発展を目指した支援を施しています。今日以降、航空機や宇宙工業がS N Sやメディアに取り上げられていた際には、読者の皆さんも是非、「この背景には、これだけの組織が携わっているんだよ。」と周囲の人にも自慢げに教えてあげて下さいね。
(米澤)
<出典>
https://www.weblio.jp/content/商工省
経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/intro/kids/qa/
https://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170925001/20170925001.html
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/kouku_uchu/index.html
全国航空機ネットワーク ホームページ
一般社団法人 日本航空宇宙工業会 ホームページ
https://www.sjac.or.jp/aboutsjac/index.html
http://www.jadc.jp/about_jadc/outline/
http://www.jaec.or.jp/kyoukai-gaiyou.html
J-STAGEトップ 農業経営研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fmsj/49/1/49_87/_article/-char/ja/
科学技術白書検索 平成14年科学白書
第1部 知による新時代の社会経済の創造に向けて 第3章 我が国に適したイノベーションシステムの構築に向けて 第4節 戦略的な「知」の展開 2. 地域のイノベーションシステム
https://whitepaper-search.nistep.go.jp/white-paper/view/22788
株式会社三井物産戦略研究所 レポート防衛装備の国際共同開発・生産と日本の防衛産業の方向性
https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1221262_10674.html
<画像の出典>
【航空宇宙産業について】ボーイング
ボーイングは1916年にアメリカ合衆国で創業し、航空宇宙産業においてエアバスと世界シェアを二分する世界最大の航空宇宙機器開発製造会社です。
次に日本との関わりについてお話しします。
ボーイングは1953年に日本に拠点を構えました。1969年からボーイング民間航空機部門は、日本の航空宇宙産業の発展に協力しています。
ボーイングは、日本の航空会社への
最大の航空機供給企業であり、防衛省の主要装備及び航空機の供給企業です。
また、日本の企業である三菱重工業株式会社、川崎重工業株式会社、株式会社SUBARUはボーイングとの共同開発製造分野において活躍しています。
ボーイングには、民間航空機、防衛・宇宙セキュリティ、ボーイング・グローバル・サービスの3つの主要部門があります。
民間航空機部門では、現在、737/747/767/777/787型機とボーイング・ビジネスジェットの開発を手がけています。
防衛・宇宙・セキリュティシステム部門では、軍用航空機の部品、衛星システムや有人宇宙船の開発、自動運転システムの開発を手がけています。
ボーイング・グローバル・サービス部門では、世界に広がる多様な機械の品質・機能を維持するため高技術のメンテナンスを提供しています。
このように、ボーイングは民間航空機、防衛・軍用機、電子・防衛システム、衛星、衛星打ち上げ機、高度情報通信システム*1など、幅広い製品とサービスを世界150ヶ国以上に届けています。
(兵地)
<出典>
Boeing ボーイングの概要
https://www.boeing.jp/ホーインク社紹介/ホーインク社の概要.page
https://kotobank.jp/word/高度情報通信システム-496956
<画像の出典>
https://publicdomainq.net/tag/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0/
*1:高度情報通信システム:高度情報社会に必要とされる大量の情報を経済的に伝達・通信・処理できる通信システムのこと。
【航空宇宙産業について】株式会社ジャムコ
【ジャムコとは】
今回は、株式会社ジャムコ(以下 ジャムコ)を紹介します。ジャムコは、航空機に関する4つの事業「航空機内装品製造」「航空機シート製造」「航空機器製造」「航空機整備」で活躍をしているTier 1の装備品メーカーです。
この記事では、ジャムコの担う4つの事業について説明し、航空機産業のどの位置で活躍をしている企業であるかをぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
【航空機内装品製造事業について】
ジャムコは、航空機用の「ラバトリー(化粧室)」と「ギャレー(厨房設備)」において世界でナンバーワンのシェアを誇っています。その他にも、客室内装備品の新規搭載などの航空機客室改修等も行っています。
新型コロナウイルスの影響はありますが、長い目で見ると世界の航空機事業は伸びていくことが予想されています。一方では世界のエアラインの競争は激しくなり、あらゆるコストの削減と他社とのサービスの差別化が求められています。航空機の客室のデザインやアレンジは、エアラインのサービス内容によって大きく異なってきますが、世界中のエアラインのこうしたニーズに的確に応え続けてきた点についてはジャムコの大きな強みです。
【航空機シート製造事業について】
航空機シート製造事業はジャムコの新しい事業です。航空機シート分野は大手2社の寡占状態でした。しかし、ある企業の品質問題を機にジャムコが航空機シート分野へ参入することとなりました。
ビジネスクラスとファーストクラスは機内でも特別な空間です。そこで用いられる高級シートはまさにその主役ともいうべき存在ですから、各航空会社はそれぞれのブランドイメージを体現するため、シートへの要求条件を非常に高く設定しています。
航空機シートの製造を始めることで、航空機内装についてのことは全て制覇したジャムコ。今後はエアラインから一機丸ごとの内装改修を引き受けていくことも可能になることが予測できます。
【航空機器製造事業について】
ジャムコはジェットエンジン部品・炭素繊維*1構造部材などを製造し、高度な品質で安全を確かにする特殊工程技術を強みにしています。
ジャムコでは、2006年4月以来、NDT(非破壊検査*2)、WLD(溶接)、HT(熱処理)、Composites(複合材)、NM(レーザー加工)の5つの工程において、航空宇宙分野における特殊工程の世界的認証制度 Nadcapによる認証を取得しています。また、航空機器製造事業は、JIS Q 9100「品質マネジメントシステム-航空・宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」の認証を取得しています。(JISQ 9100はAS9100/EN9100と同等です。)JISやNadcapの他にも「炭素繊維複合材(CFRP)の連続成形製法」という特許も取得しています。
【航空機整備事業】
ジャムコは、伊藤忠式N-62型機「イーグレット」の製造事業を手掛けた技術を継承し、60年以上の実績を誇る国内最大の独立系整備専門会社として幅広い活動をしています。
機体の整備の他にも、ホイール(車輪)やブレーキ等の装飾品の整備も行っています。件数としては世界最大級を誇り、アフターサービスまで手厚く手掛けています。
ジャムコについて少しでも理解が深まりましたか。世界で戦えるレベルの航空機メーカーが日本にあるとは、非常に誇らしいですね。
(加藤)
<出典>
ジャムコHPトップ
https://www.jamco.co.jp/ja/index.html
https://www.carbonfiber.gr.jp/material/feature.html
事業内容
https://www.jamco.co.jp/ja/business.html
航空機内装品について
https://www.jamco.co.jp/ja/business/kco.html
航空機シートについて
https://www.jamco.co.jp/ja/business/sd.html
航空機器製造について
https://www.jamco.co.jp/ja/business/jco.html
航空機整備について
https://www.jamco.co.jp/ja/business/aco.html
<画像の出典>
いらすとや
https://www.irasutoya.com/2016/10/blog-post_473.html
いらすとや
【航空宇宙産業について】航空機エンジンメーカー
航空機エンジンメーカーはエンジンを作るために必要なパーツをエンジン完成メーカーに依頼されて納入するメーカーのことです。
日本で代表的な企業は株式会社IHI(以下IHI)や三菱重工業株式会社(以下三菱重工)、川崎重工業株式会社(以下川崎重工)などがあげられます。
IHIはエアバスにファンモジュール*1、ボーイングにタービンの回転部分などを納入しています。三菱重工はボーイングにタービンブレード*2、エアバスに燃焼器部位を納入しています。川崎重工はボーイングに中圧圧縮機モジュール*3、エアバスにファンケース*4を納入しています。
航空機のエンジンの開発方式としては膨大な開発費用の軽減などの観点から国際共同開発が基本となっています。
日本ではアメリカのプラットアンドホイットニー社との共同開発でエアバスA320型機のエンジンであるPW100G-JMというエンジンの製造にIHIや川崎重工、三菱重工が参加しています。
またボーイング787のエンジンであるGEnxエンジンとTrent1000エンジンの開発にも参加しています。GEnxエンジンはゼネラルエレクトリック社、Trent1000エンジンはロールスロイス社とそれぞれ共同で開発しておりIHIや川崎重工、三菱重工が参加しています。
(山田)
<出典>
http://www.jaec.or.jp/pdf/JAEC(ja)2018.pdf#zoom=100
航空機産業の動向と参入のタイミング
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/kouku_uchu/data/doko_timing.pdf
三菱重工 ホームページ
https://www.mhi-aeroeng.co.jp/
IHI ホームページ
ihi.co.jp/ihi/products/aeroengine_space_defense/aircraft_engines/
川崎重工 ホームページ
https://www.khi.co.jp/mobility/aero/jet_engine/
ファンケース、構造用ガイドベーン」IHI ホームページ
https://www.ihi.co.jp/ia/products/air-engine/sgv/index.html
大型民間航空機用エンジン「Trentシリーズ」向け中圧圧縮機モジュールの納入累計1,000台を達成 川崎 ホームページ
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20180319_1.html
航空実用辞典
http://www.jal.com/ja/jiten/dict/p217.html
安定運用を支える燃焼器技術
//power.mhi.com/jp/products/gasturbines/technology/combustor
<画像の出典>
PhotoAC
PhotoAC
PhotoAC
PhotoAC
【航空宇宙産業について】航空機完成メーカー
今回は航空機完成メーカーについて説明します。
航空機完成メーカーとはサプライヤーから集めた部品をすべて集めて航空機を組み立てるメーカーです。またどのような航空機を製造するかを決めたり、そのために技術開発をするなどの業務を行っています。
航空機完成メーカーは主にエアバスとボーイングの寡占市場となっています。
航空機を製造する方法として国際共同開発が主流となっています。
民間機の開発には多くの開発費用が掛かるため複数のパートナーと共同で開発を行うようになりました。
日本の企業では川崎重工業株式会社や三菱重工業株式会社などがボーイング787やエアバスのA320などを共同で開発しています。
国際共同開発のメリットとしては開発費を抑えることができ、それぞれの協力企業の技術を生かすことができるので一社で開発するよりも短期で低コストの開発を行うことができます。
従来の民間機開発では航空機完成メーカーが基本設計を行い、その仕様に合ったパーツをサプライヤーに製造してもらう手法をとっていました。しかしこの方法だと開発・製造に時間がかかってしまっていました。最近では基本設計の前段階のコンセプトを決めるコンセプト設計からサプライヤーに参加してもらっています。
こうすることで費用の削減とサプライヤーの知恵を設計段階から取り入れることができるようになりました。
(山田)
<出典>
雑誌「AIRLINE」2016/01
航空機メーカーの寡占化の現状(公財)航空機国際共同開発促進基金
http://www.iadf.or.jp/document/pdf/30-5.pdf
「民間航空機の国際共同開発」名古屋航空宇宙システム製作所
http://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/391/391024.pdf
<画像の出典>
photoAC
photoAC
【 航空宇宙産業について】品質管理
今回は品質管理について紹介します。
品質管理とは、商品やサービスを提供するにあたり、その品質に問題がないか検証・保証することです。品質管理は基本的に、生産から販売まで一連の流れを管理することを指します。具体的な内容として、工程管理、品質検証、品質改善があります。
工程管理では、商品やサービスをつくる工程そのものを管理します。生産工程に必要な労働力や原材料、設備などを管理し、常に効率よく生産できる体制の維持をします。
品質検証では、仕入れた原材料や部品などの製品を検査、管理をします。
品質改善では、製造工程において生じる様々な問題点を洗い出し、その解決によって品質を改善し、未然に納品トラブル等を防ぎます。
国際的な規格にはISO規格が使われています。ISO規格とは、ISO(international organization for standardization )が定義した国際的に通用する規格や標準のことです。
その中にISO9001があります。ISO9001は一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるための品質マネジメントシステムに対する国際規格です。
また、日本での航空宇宙産業向け品質マネジメントシステム規格の1つとしてJISQ9100があります。
JIS規格はJISC(日本産業標準調査会)によって定められた日本の国家規格です。
JISQ9100はISO9001をベースに日本語に翻訳し、航空宇宙・防衛産業特有の要求項目を追加したものになります。
また、AS9100、EN9100という航空宇宙産業向け品質マネジメントシステム規格があります。これらは国際航空宇宙品質グループ(IAQG)が発行している品質マネジメントシステム規格です。AS9100は米国向け、EN9100は欧州向けの規格となります。
これらはJISQ9100同様、ISO規格をベースに航空宇宙・防衛産業特有の要求事項を追加したものです。
(兵地)
<出典>
Asia AD
https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/what-is-quality-management
JISC ホームページ ISO
https://www.jisc.go.jp/international/index.html
JISC ホームページ JIS規格詳細
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?toGnrJISStandardDetailList
JAQG 航空宇宙品質センター
【 航空宇宙産業について】NADCAPについて
今回は、NADCAPについて説明します。
NADCAPは、アメリカのNPOであるPRI(Performance Review Institute )が審査機関として運営している、国際航空宇宙産業における特殊工程や製品に対する認証制度のことです。
ボーイング、エアバス、三菱重工業株式会社など、世界の航空宇宙関連企業である機体・エンジン及び搭載機器の主要企業が取得しています。
製造企業が顧客に発注する製品に特殊工程が含まれる場合には、製造委託する条件としてNADCAPの認証の取得を義務付けている場合が多いです。
また、NADCAP を取得するためにはAS/EN/JISQ9100取得が前提となります。
(兵地)
<出典>
全国航空機クラスター・ネットワーク
hinshoken × TFM